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ノンデザイナーにこそ知って欲しいデザイン思考とは

「デザイン思考」「デザインシンキング(Design Thinking)」
ビジネスの場において、最近このような言葉を耳にする機会が増えたかたも多いのではないでしょうか。

デザイナーによる、デザイナーのためにあるようにも見えるこの「デザイン思考」という言葉ですが、実はあらゆる世界で応用されている考え方なのです。
Appleや日立、富士フィルムなど、世界的な企業でも採用されています。
今回は、そんなデザイン思考が一体どのようなものなのか、どのように実行するべきなのかを解説していきます。

デザイン思考とは

デザイン思考とは、問題や課題に対しデザイン的な考え方と手法で解決策を見出す方法やプロセスのこと。
ユーザーにフォーカスして考え進めることを最大の特徴としています。
問題を解決に導くために用いられるマインドセット(考え方)のひとつで、行動しながら考え、より良い結果を追い求める方法です。
この言葉は、アメリカのスタンフォード大学と、世界的に有名なデザインコンサルタント会社のIDEOが広めたと言われており、具体的な特徴としては

  • ・ユーザーを起点に考える
  • ・対話・コミュニケーションを重視する
  • ・繰り返し試す

といった3点があげられます。
「デザイン思考」では、「本当の問題は何か」「仮説は本当に正しいのか」「この現象が意味するものは何か」…というように、いくつもの自問自答をしながら、問題解決に挑戦していきます。

アート思考との違い

デザイン思考と同じような意味で用いられがちなのが、「アート思考」。
この「アート思考」は、アーティストの自己や価値観の表現を基にした考え方で、自分起点の考えかたを重視しています。
ビジネスにおいては、当人に達成したい強い意思のある目標設定や、オリジナリティあるアイデア、コンセプトの発想に向いている考え方です。

一方の「デザイン思考」は、先述した通り顧客の持つ課題の解決を目指す考え方であり、ユーザー起点で考えることが重要です。
端的にいうと、「アート思考」は自分を起点にした考え方であり、「デザイン思考」は顧客を起点とした考え方である、ということです。

システム思考との関係性

デザイン思考と切っても切り離せない関係にあるのが、「システム思考」という考え方。
この「システム思考」とは、一般的に俯瞰的にものを見ることであると解釈されています。
実はこれも、デザイン思考と同様に問題を解決に導くためのマインドセットのひとつ。
解決すべき対象や問題を「システム」として捉え、その全体像をさまざまな要素のつながりとして理解し、原因を探ります。そうして本質的な原因を見通し、問題解決を目指すのです。

デザイン思考は人間中心的な問題解決のアプローチ方法であるのに対してシステム思考は分析的な問題解決のアプローチ方法です。
対極であるようにも捉えられるこのふたつの思考法。ただし、問題解決というゴールに向かうための手段であることは共通しています。
デザイン思考の5段階(後述)を用いて具体的なゴールを定義した上で、その明確になった目標に向かいシステム思考で問題解決をはかる…など、両者を組み合わせてアプローチする手法も考えられます。

デザイン思考のプロセス

さて、ここまでデザイン思考の概要について解説してきましたが、具体的にはどのようなプロセスをたどるのでしょうか。
もちろん一言で「デザイン思考」といっても実際には定義が広く、今日使われている「デザイン思考」という言葉は人によっても多少の差異があります。
しかし、派生した考え方であっても、デザイン思考の根本的な考え方は変わりません。

ここでは、先述したようにデザイン思考を世に広めたとされているハーバード大学のデザイン研究所(The Harvard Graduate School of Design)に所属するハッソ・プラットナー教授が提唱した、『デザイン思考の5段階』というモデルをご紹介します。

それが、こちら。

「共感 (Empathize)」「定義 (Define)」「概念化 (Ideate)」「試作 (Prototype)」「テスト (Test)」

これを簡単に説明すると「まずは試しに実行してみて、PCDAを回していく」ことであるといえますが、ここではそれぞれの段階を詳しく見ていくことにしましょう。

1.共感 (Empathize)

ユーザーの目線に立ちながら物事を考え、その行動を理解し、心理に寄り添って共感することで、彼らが抱える問題やニーズを見つけることができます。
具体的な施策としては、製品をユーザーに使ってもらうユーザーテストや、仮説検証型のユーザーインタビューなどが挙げられます。
また、対象を狭い範囲に絞ったインタビューやテストの実施も推奨されます。
なお、テストやインタビューの際には、事前に決めた調査項目だけにとらわれず、インタビューや観察のなかで登場したキーワードや疑問点を掘り下げていくことも大切です。

2.定義 (Define)

ここでは、「共感(Empathize)」のプロセスで見つかったニーズや問題をさらに掘り下げ、潜在的な不満や課題を明確に定義します。
ユーザーの声をそのままの意味で受け取るのではなく、その内容から根本的な不満や課題を見つけ出し、定義していくことが重要です。

3.概念化 (Ideate)

この「概念化(Ideate)」はしばしば「創造」とも訳されます。
ユーザーの抱える課題へアプローチできるアイデアを多角的に考えていく段階です。
アイデア出しの際には実現の可能性や固定概念にとらわれず、自由に意見交換を行いましょう。集まったアイデアをまとめるのには、マインドマップという手法もおすすめです。
ある程度のアイデアが出揃ったら、「定義(Define)」で確定した課題を見直しながら、その選定を行います。

4.試作 (Prototype)

アイデアがまとまったら、次に「試作(Prototype)」を行います。これはプロトタイプ(試作品や原型)を作成する段階です。
具現化されたプロトタイプがあれば、チームメンバー内でイメージの共有ができ、認識のズレをすり合わせることができます。
また、試作をもとに、機能性や実現性についての話し合いを行うこともできます。
そして何より、具現化したアイデアが定義された問題の解決につながるのかどうか、試行錯誤を繰り返しながら検証することが大切です。
なお、プロトタイプは、はじめに紙で簡単な製品を作る、デザインのみを模型として作るなど、段階にそって進めていきます。

5.検証 (Test)

最後のプロセスは「検証(Test)」です。実際のユーザーに試作品を利用してもらい、フィードバックをもらったり、使用中の様子を観察したりします。そして、その情報を基に、課題解決や目的達成がなされているかを検証します。
もしも検証結果で新たな課題が発見できた場合は、再び前の段階に戻り、試行錯誤を繰り返します。

ここで重要なことは、これらの5段階のサイクルを何度も繰り返すこと。
1度で完成品を作り上げるのではなく、あくまで試作品の段階のものを用いて何度も何度も繰り返すことで最適解を得ることを目指すことが大切です。

まとめ

現代において多くの人々が可能性を見出しているデザイン思考。
プロジェクトに取り入れるのにはハードルが高いかもしれませんが、「まずは試しに実行してみて、PCDAを回していく」という考え方は日常生活にも応用することができます。
まずは身近なところから試してみてはいかがでしょうか。

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