大きく全体図を書いていく
大きく描いて詳細を詰めていく
Web広告ならず、何を始める場合でもまずは全体を大きく描くことが重要です。細かいところまできちんと詰めていくことはもちろん重要ですが、まずは大きく全体から徐々に詳細を詰めていくことが重要です。
そのために、まず初めにWeb広告をはじめる上で全体の方針を決めるためのロードマップを描いていきましょう。
ここで重要なのは詳細を描きすぎないことです。Web広告は多くの数字を可視化できるため、実施してから結果が出るのに時間が短く、データが揃うのがいいところです。
ある程度方針を決めた後は、実際手を動かしていく中で改善してい行くのが効果的です。重要なのは目標を作ることではなく、成果を上げることなので、注意しましょう。
目標の作り方と3つの目標を作る理由
目標の作り方は大きく分けて2パターンあります。1つは過去の実績を元に作成する場合と、もう1つは新しく作成する場合です。まずは過去の実績を元に作成場合についてです。
そして目標は「現実目標」、「理想目標」、「限界目標」の3つ立てておきましょう。そうすることで進捗状況を把握するためのバロメーターになります。
目標に関しては1つのみ作成している所が多いのですが、複数のシナリオを考えながら目標を作ることで、実際に走り始めた後、
「今の状況は理想的な状態にあるのか?」
「想定通り?」
「実はかなり限界ギリギリで走っている?」
といったチェックするためのバロメーターになります。
過去実績を元に目標設計する場合
まず、過去の実績がある場合、過去の実績を元に基準となる現実目標を立て、事業計画上どこまで目指すのかという理想目標、どこまで許容できるかという限界目標の3つを立てることで、Web広告開始後の進行状況の判断指標になります。
このそれぞれの目標を立てる際、過去の実績を元に季節や時期需要にトレンドのある業界であれば、トレンドを加味しながら作っていくのがよろしいでしょう。
例えば、ふるさと納税に関しては年末を迎える11月12月に需要が集中するためこの動きを加味して目標を立てることをオススメします。
目標を作るにあたって、ここでも重要なのは大きく描いて詳細を決めていく事です。
そのためにもまずは年間の目標を決め、半期、四半期、月次単位と細分化していくことを意識しておきましょう。
そうすることで定期的に現状把握ができるので、今の状況が良いのか、悪いのかわからない迷子になることは減ると思います。
また、目標に対して大きく上振れで進捗している時、何が要因なのか、そもそも理想目標も上回るペースなのか、それとも現実目標と理想目標の間なのか等、複数の目標を作成しておくことで良し悪しの程度の判断も楽になります。
例えば基準となる「現実目標」1つのみで走り出したとします。現実目標のCPAを1,000円とし、この四半期のCPAが800円だった場合、目標よりは良いものの、更なる投資を検討すべきかという判断が難しくなります。一方「理想目標」のCPAが850円の場合、50円分の余力は少なくともあるので、更なる投資をすべきだという判断が容易になります。
参考にできる過去実績がなく、新しく目標設計する場合
次に、新しく目標を設計する場合です。この場合、比較する過去の実績がないため、詳細までは決めず、走りながら目標をアップデートしていく事をオススメします。
そのうえでどのように現実目標を決めていくかですが、まずは競合となるサービスを探し、概ねどの程度を目標とすべきかを算出します。これは業界によって原価率やROASが異なりますのでプロモーション対象の商品に依ります。
現実目標を決めた後は、先ほどと同様に理想目標、限界目標を策定しましょう。
3本の目標ができれば詳細に落としていきます。年間、半期、四半期、月次単位と細分化していきますが時期需要におけるトレンドに関してはGoogleトレンドを使い、業界のKWや競合のサービス名を入れてみましょう。
そうすることで概ねのトレンドに関しては把握することができ、時期需要に関しては読み込めるはずです。
最後に、新しく目標を作る上で重要なポイントは目標を見直す頻度を決めておくということです。サービスにもよりますが、概ね四半期、月次単位で今後の目標は見直すのがオススメです。
あくまで最初に作った目標は当初目標とし、順次目標は見直し、アップデートをかけて行きましょう。明らかに達成が難しい目標を引いていたとしてもそれは無意味ですので、新しく目標を作っていく場合は適宜見直し、適正な目標値に調整していきましょう。
商材別ターゲットの考え方
ターゲット選定の考え方
目標が決まり「Web広告を始めよう」となった時、とりあえずどんな媒体で実施するか、何を作るよりも、まずターゲット選定をする必要があります。
自社の商品がどういう人に利用されるのか、その人がどこに、どのくらい潜んでいるのかを考える所から始めます。
例えば、最近増えてきているように見受けられるSaaSのビジネスモデルを展開している企業ですと、商品(SaaS)を使用するのは、HR部門の方なのか、マーケティング担当なのか、はたまた契約などを管理している部門なのか、商品によって異なると思います。ただ、ターゲット選定は明確にするべきであり、定めたターゲットに対し適した媒体・手法を用いて正確に広告を届ける必要があります。
一方、例えばメルカリやFiNC、ZOZOTOWN等、BtoCでサービスを展開しており、幅広い一般ユーザーがターゲットとなる場合。端からターゲットを絞りピンポイントに広告を届けに行くよりも、まずは幅広く配信し、初速・途中結果を見て、その後効率良く届けられているターゲットに絞る調整をする手法を用いる方法もあります。そうすることで、確度の高いユーザーの見定めを誤ることなく、結果効率の良い配信となる場合もあります。
上記は方法論の一例であり、ターゲット選定の考え方は商材によって異なるので、鵜呑みせず自社だあればどうだろう、と選定の仕方からきちんと社内で議論・思考していく必要があります。また、上述2つの方向に振り切る必要はなく両方試しながらどういう方法でやっていくのも良いと思います。
ただ共通して言えることとしては、いずれのパターンにおいても然るべきロジックの上、仮説立てをすることです。仮説を明確化しておくことで実施後、結果何が良くて何が悪かったのか、どこまでは仮説通りでどこからが違うのか、などの検証ができなくなってしまうからです。
選定ターゲットを元に施策を策定する前に…
ターゲットが決まったら次は施策を考えます。施策は媒体によりけりで様々ですが、仮説とターゲットが明確化されていれば、媒体選定や配信する面、入札するリスティングのキーワード選定などはスムーズに進めることができると思います。
ただ施策策定の前に、もし可能であれば、すでに商品を使用・購入したカスタマーに対し、初期の接点やどのようなステップを踏んで検討~利用まで至ったのかなどのヒアリングができると立てた仮説・選定したターゲットの妥当性の確認、見直しをすることができ、より精度の高い施策策定に繋げることができます。ヒアリングの手法としては、メールを通してのアンケート調査や、オフライン座談会の場を設ける、などがあります。
ヒアリングの結果、実際に立てた仮説と異なる実態が見えてくるるケースもあります。
例えば、ほとんどのカスタマーは検索を通して商品を認知したのだろうという仮説を立てた、それでは定めたターゲットに対しハマるようなリスティングの一般キーワードで手厚くアプローチをしよう、という施策策定の方向性になっていた場合、
座談会でカスタマーの声を聴いてみると、実際には、仲のいいパートナー会社からのオススメであったり、実店鋪の販売員さんからの紹介であったり、友人が使っていたからという理由でサービスを使い始めた、など最初から検索をして自社や競合サイトを見ることはほとんどなく、第三者からの紹介や口コミで商品認知~利用検討した方が大半であったこともあります。その場合、リスティングでの一般キーワード配信でのアプローチから、インフルエンサーの活用や提携媒体での紹介インセンティブの打診、アフィリエイトの活用など施策策定の方向性が変わってきます。
このように、いくらデータやリサーチ結果を元に、熟考し立てた仮説・ターゲットであっても現場の声を取り入れてみると、見直しが必要なことに気付けることもあります。
ここまで変わるクリエイティブの検証
クリエイティブは何故重要か
さて、ここまでで今回狙うターゲットはどういう理由で自社のサービスを使い始めてくれたのかがイメージでき、何から始めるかきまってきたかと思います。
ここからは実際に広告配信をする場合を想定します。
まず、広告配信において重要かつ必ず必要になってくるのがバナーや動画等といったクリエイティブになるのですが、このクリエイティブが非常に重要になってきます。
主にサービスを使う、商品を購入する際、LPやアプリのストアに行くかと思います。そのLPやアプリのストアにはたくさんの情報が載っているかと思うのですが、そこまでユーザーに来てもらわないとそもそも利用には繋がりません。
そこにターゲットを連れてくる重要な役割をクリエイティブが果たしています。
このクリエイティブによっては同じ費用でも獲得単価が半分以下になることや、広告クリック率が2倍異常になり、バナーであれば早い所だと数時間で作成することもできるので、検証をしっかり回していくことが重要です。
実際、私自身もクリエイティブの表現の幅が少ないと言われている金融業界でしっかりと検証フローを設計したことで、配信金額を伸ばしながら、約2か月間で広告クリック率を160%程度改善したことがあります。
クリエイティブ検証の仕方
では具体的にどのようにしてクリエイティブの検証フローを作っていくのかですが、工程としては3工程に分かれます。
①まずは訴求の洗い出し
まずは自社のサービスの訴求を洗い出します。
例えば「業界で最安値」、「基本料金0円」といった具体的な費用感の訴求や「累計3,000万DL突破!」、「3分に1人が入会」等のユーザーが多いことを強調すること、「最短即日配達」、「映画や漫画が見放題」といったサービスの機能の訴求。
これらをまずは利用者へのヒアリングや自社のおしていきたい内容を洗い出していきいくつかに分類していきます。
②訴求別にメインコピーを決める
次にやることは分類した訴求をコピーに落としていきます。
ここではとにかく量を出してください。1つの訴求に対して少なくとも10パターンはあるとよいかと思います。
例えば「安さ」の訴求であれば、「業界最安値」、「ワンコインではじめられる」、「安さで選ぶなら」といった形で量を書いていきます。いわゆるブレストになります。
ここで重要なのが、まずは1人で書き出してみるということです。
1人で書き出すメリットは人に頼らなくなること、別のことを考える時間がなくなることです。ブレストの失敗例でよくあるのが初めから複数人で案を出すことです。いきなり全員でブレストをしてしまうと他の人が考えてくれているから思考を放棄する人や、周りが案を出している間に別の仕事を考える人がいます。なので、まずは1人ブレストで書き出してみましょう。その後で各々が持ってきた案を元に掛け合わせてよりよい案ができないかを考えてみましょう。
ある程度出そろったところで各訴求毎に2つ程度メインのコピーを決めていきましょう。こうすることで訴求×2パターン程度のコピーが揃います。
③優先順位を決めて検証開始
訴求別にコピーが作成したら次は優先順位の決定です。
優先順位の決め方はそれぞれですが、ある程度調査データがあるのであればそのデータを参考に確度の高そうな訴求から優先的に検証していくのがいいかと思います。
配信金額にもよりますが、検証期間としては概ね1週間~2週間あれば充分です。結果が出れば最も効果の悪いクリエイティブを停止し、新しいクリエイティブを追加していきましょう。
順次クリエイティブ検証をしていくと、概ねこの訴求の効果が良いというところが見えてくるはずです。
効果のよい訴求が決まりましたら、案出ししたコピーと実績を元に新しいクリエイティブを作っては検証、作っては検証していきましょう。
ここでも重要なのは仮説です。仮説を立てておけばどこまでが当たっていて、こういう結果が出たから次にこういうクリエイティブを作ればこういう結果になるだろう、と考えながらクリエイティブを検証していきましょう。
Web広告におけるクリエイティブは科学できます。諦めずに続けていくことで着実に効果は改善されていきますので、地道に取組んでいきましょう。
媒体に評価されるために必要なこと
クリエイティブにおいてもう1つ重要な考え方があります。それは媒体から評価されるようにクリエイティブを作っていくことです。
せっかくここまできちんと考えてクリエイティブを作ってきたのに媒体から評価されないクリエイティブだと、どんなにいいクリエイティブでも配信がされません。
例えば、Facebookだと広告クリエイティブにおけるテキスト量の割合をAIで判定しております。そこでテキスト量が多いと判定されてしまうと、テキスト量が少ないクリエイティブと比べて配信されにくくなってしまいます。
▼Facebookにおけるテキスト量checkツールはこちら
こういった媒体毎のルールは見落としがちなので、せっかく作ったクリエイティブが適切に評価されるためにはどうする必要があるのか、専門性高い代理店や媒体に直接問い合わせてみることも重要です。
振返りと改善:仮説と事実の検証
事実と「どこが」、「なぜ」違ったのかを考える
最後に配信した後の実績を振返り、次どのような改善をしていくべきなのかについてです。
ここまで何回かお伝えした通り、Web広告では必ず仮説を持つようにしておきましょう。こうして事前に立てておいた仮説と実績を見比べていきます。
ターゲットの絞り方は合っていたけど、クリエイティブが調査の実績と違う結果が出ていた。男性の方が効率がいいとと思っていたが女性の方が効率がよかった。
このような実績が出た時、次はどのように改善を加えて回していくのか。新しい仮説を立てながら検証を回していきましょう。
Web広告をしていると、ホームランが出るときもあります。しかしそのホームランをまぐれにするのか、狙って打てるようになるのかこの楽しさがWeb広告にはあります。
基本的には地道にやっていくしかないWeb広告ですが、仮説を持ちながら実施していると必ず結果が出るのがWeb広告です。思っていた通りの結果にならない事も多々あるかと思いますが、めげずに取り組んでいきましょう。